数ヵ月後… 第1空隊訓練施設 「おい、聞いたか?今度来る教導隊の人の話」 「聞いた。なんでも、あのエースオブエースが来るとか」 ひそひそと噂話に花を咲かせる二人。話の内容からどうやら第12空隊 のメンバーらしい。 「女、しかも20歳で教導隊のエースって言うくらいだから、そうとう 怖い女なんだろうな」 「でも、雑誌で見たけど、結構、可愛い人だぜ」 「マジかよ…まぁ、どんなやつで第12空隊のエースである、このパトリック・コーラサワー様がちょいと捻って…」 「コホン!」 「「!!た、隊長!?」」 「くだらない話に花を咲かせている暇があったら、訓練に励んだらど うだ?」 上司からの叱責にひるむことなく、コーラサワーと名乗る男は反論する。 「そうはいっても、休憩時間くらい有効に…あれ?」 コーラサワーは、隊長の後ろにいる一人の女性の姿に気づいた。 そして、不覚にも彼の悪い癖が発動してしまう。 「俺は第12空隊のエース。パトリック・コーラサワー。そこの可愛い お嬢さん。良かったら俺とお茶でも」 「なっ!お前!?」 「ずいぶん突然の申し出ですね」 うろたえる隊長をさえぎるかのように、その女性が言葉を発した。 「確かに。じゃあ、俺はこれから訓練なので、その後ではどうです か?」 「良いですよ。そのときにあなたの体力が残っていれば…ね」 「それは…どういう…」 「あ…あ…」 それまで成り行きを見守っていたコーラサワーの友人が、震えだした 手を必死に頭の上にかざし、敬礼の構えをとった。 「た…高町なのは一等空尉殿!」 「はい、なんですか?」 「え?え?」 状況を理解した友人と状況を全く理解していないコーラサワーには雲 泥の差があった。 それをみかねた隊長が出した助け舟。その内容は…コーラサワーのそ の後の運命を決定付けるものだった。 「こちらは、このたび我々の部隊の教導を担当してくださる時空管理 局本局教導隊の高町なのは一等空尉殿だ」 「…よろしくお願いしますね。コーラサワーさん」 ------------ 「それでは、今日の訓練は終了とします。お疲れ様でした」 「「「お疲れ様でした!!!」」」 目が覚めてから3ヶ月。リハビリを繰り返して、なんとか復帰を果たし てからの初めてのお仕事が終わった。 Mail boxを開くと、何通ものメールが来ていた。 はやてちゃんや守護騎士のみんな。 スバル、ティアナ、キャロ、エリオのフォワード陣。 フェイトちゃんやヴィヴィオ。みんなが心配して、メールをくれたら しい。 みんな、優しいな。 『ママげんき?おてがみのかきかた、フェイトママにおしえてもらっ たの。また書くね。 ヴィヴィオ』 『復帰おめでとうなー。また、美味しいもの食べに行こうなー。 八 神はやて』 『元気ですか? 私はレスキューに戻って、元気にしてます。そう言 えば、今度、飛行訓練を受ける予定です。いつかはなのはさんと同じ 空を飛びたいなぁ…なんて思ってます。それでは、お体に気をつけ て。 スバル・ナカジマ』 そっか、スバル、飛行訓練受けるんだ…。 ふと、青い空を見上げる。 天井なんかない突き抜ける青が懐かしくて、見つめていると溶けてい きそうな感じが気持ちよかった。 魔法との突然の出会いから十数年。 初めて空を飛んだ日もこんな青い空だったっけ。 それからの私には、嬉しいことや悲しいこと、出会いや別れ。 ホントにいろんなことがあって、そのたびに、いっぱい笑って、いっ ぱい泣いた。 大怪我して、飛べなくなるかもしれなかった時期もあった。 それでも、私が苦しいときや辛いときには、気づけば傍にみんながい てくれた だから…私を支えてくれてるすべての人に伝えたい。 私は笑顔でいます。元気です。