数日後…聖王協会、騎士カリムの部屋。 「これが、高町なのは一等空尉とスバル・ナカジマ一等陸士へ届いたメッセージや。これを見て、カリム…どう思う?」 私は、カリムの目を見つめる。カリムは、少し考え、そして、ゆっくりと話し始めた。 「正直、私には、このメールがどういったものなのかは理解できない。ただね…この間、ほんの2週間前に奇妙な予言が出たの。」 「予言?」 「ええ。内容は『忘れられし数字、蘇りし夢。降りかかる厄災は彼の地で目覚める。恐れるならば闇、立ち向かうならば光。無にかえすことができるのは真なるもののみ。』よ。もっとも、これが私達にとって、どういう意味を持っているかはわからないけれど…。」 「ん〜。確かに、よぉわからんな。」 「ごめんなさい。力になれなくて…」 カリムが悲しそうな顔をして、俯く。カリムは優しいから、責任感じてしまうんやろけど、それはあかん。 「カリム」 「ん?」 「カリムが謝る必要なんか、全然あらへんよ。むしろ、私の話を聞いてもらってるんやから、感謝感激雨霰や。」 「もぉ、はやてったら。」 ようやく、笑ってくれた。カリムは、笑ってる顔の方がええなぁ。しかし、どないしよかな…このメールのことも気になるし、カリムの予言も気になる。 忘れられし数字…これが、メールに書いてあったNo.0のことだとすると…やっぱり、スカリエッティに話を聞いてみよか。 たしか、スカリエッティのいる拘置所は…お、あったあった。 「もしもし、時空管理局本局特別捜査官八神はやて二等陸佐です。そちらにいるスカリエッティへの面会の件なんですけど…」     ‐数時間前 「フェイトさん」 その声に振り向くと、向こうのほうからティアナが走ってきていた。機動六課が解散してからは、ティアナは、私の執務官補佐として働いてくれている。 「はぁ、はぁ。」 「どうしたの?そんなに慌てて…」 「フェイトさん…あ、いえ、フェイト執務官。これ、頼まれていた資料です。」 「別に公式の場じゃないんだから、フェイトさんで大丈夫だよ。資料ありがとね、ティアナ。」 「いえ、これくらいなら大丈夫です。」 「そっか…ああ、そういえば、ティアナはこれから時間あるかな?」 「あ、はい。」 「それじゃあ、一緒にお昼ご飯食べようか。シャーリーと約束してるんだ。」 「そういうことなら、ご一緒させていただきます。」 「それじゃあ…」 ピーピー 通信? 「はい、こちらフェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です。」 『こちらは、時空管理局通信局です。異次元空間での事件発生。ハラオウン執務官には、ただちに現場に向かっていただきたいのですが、よろしいですか?』 「了解です。現場の座標は?」 『後で、こちらからデータ転送させていただきます。詳しくは、そちらを参照してください。』 「了解」 通信をきる。ティアナは、出番がきたという感じで目を輝かせている。 「一緒に行く?」 「はい、もちろんです。」 「でも、あんまり無茶はダメだよ。」 「わかってます。なのはさんにしっかり教えていただきましたから。」 「あはは…それじゃ、大丈夫だね。」 「それじゃあ、シャーリーに連絡とって、それから現場に向かおうか。」 「はい、了解です。ところで、現場の場所はどこなんですか?」 「えーと…え?」 送られてきたデータを見て、私は目を疑った。 まさか、この場所で、事件が起こるなんて… 「どうしたんです?」 「場所は…海鳴市。私やなのは達が子供の頃、過ごした場所。」 ‐海鳴市郊外海鳴海浜公園。 「ここへ来るのは、1年ぶりくらいですね。」 ティアナが、懐かしそうに空を見上げる。1年ぶりの海鳴市はほとんど変わっていなかった。 「ティアナは、軌道六課のときここへ来たことがあるんだよね?」 「はい。シャーリーさんは初めてですか?」 「私は、あのときはオペレーターだったからね。フェイトさんは、子供時代は、ここに住んでたんですよね?」 「うん。そうだよ。なのはやはやても一緒にね。」 「そうだったんですか…でも、思い出の場所なのに、こんな大きい穴をあけられてしまっては…」 シャーリーが、眼下の穴を見て、残念そうに呟く。 直径10メートルほどだろうか。おそらくは、魔力攻撃もしくは以前から報告に上がっているロストロギアの原因不明の爆発…。 「でも、深夜で人がいなかったことだけが幸いかな。」 そう、大規模爆発が起こったのは深夜3時。人の立ち入らない森の奥で爆発は起こった。 「それにしても、原因はなんなんでしょうね…これ」 「もしかしたら…とは思うけど、ロストロギア関係かもね」 「でも、この場所には、魔法文化は発達してないんですよね?」 「うん…それでも、海鳴ではレリックが発見されていたりしてるからね。油断はできないよ」 「そうですね…だけど、この世界だと魔法文化が発達して無いせいもあって、おおっぴらに捜査はできませんね。どうしようかなぁ」 「うん、それでも、結界を張れば、ある程度はできるかな。それに現地には、頼りになる友人もいるしね。」 「友人ですか?」 「もうそろそろ来てくれるはずだよ。」 「フェイト〜」 「アリサ」 金色の髪をなびかせて、向こうから走ってくるのは、とても懐かしい友人だ。私の大切な友達。 「久しぶり、フェイト♪」 「久しぶりだね、アリサ」 「お久しぶりです、アリサさん。」 「あーっ、ティアナ〜。綺麗になったね〜」 「そ、そんな…」 顔を真っ赤にしてティアナは照れている。 ティアナは、機動六課にいた一年で、大分変わったように思う。出会ったときから、素直で真っ直ぐな子だとは思っていたけど、それを表現するのが苦手だった。だけど、今は、感情を凄く見せてくれて…それが嬉しい。 「あのー、フェイトさん。こちらの方は…」 「あ、そうか。シャーリーは初めてだよね。こちら…」 一通り紹介が終わり、私達は、しばらく近くのベンチで休憩をすることにした。