「ロングアーチ2、了解。ただちに医療班を向かわせるわね」 キャロからの通信をきって、医療班の手配をする。 「シャーリー。どれくらいで、行けそうだ?」 話しかけてきたのは、今、この場で指揮を取っているグリフィスだ。 「1時間もしないうちに到着できると思う。幸い、キャロの治癒魔法が効いてるらしいから、たぶん大丈夫。ただ…」 「戦闘には参加できない…か」 「うん…」 なのはさん、スバル、ギンガは詳細が不明だし、ヴィータ副隊長とシグナム副隊長はガジェットに完全に足止めされている。 「なんにしても、戦力に関しては八神部隊長が上と掛け合ってくれてる。そのうち、援軍が到着するさ」 「…うん、そうだね…」 どのみち、私にはみんなの無事を祈るくらいしかできない。 どうか、お願い、みんな無事に帰ってきて… --------- モニターを眺めて、スカリエッティが舌打ちをしている。 「アキレスが落ちたか。まぁ、良い…はじめから、それほど期待などしていなかったし…記憶の定着のために無茶をしたからな、どうせ、長くはもたん…ところで、気分はどうだね?」 私はモニター室に移され、両手足を拘束された状態で床に座らされていた。 「…」 「ご機嫌斜めといったところか。なら、これはどうだ?」 画面には、ぼろぼろになったなのはとそれを高いところから見下ろしているアリシアの姿が映っていた。 「くっ…なのは…アリシア…」 それでも、何もできない…そんな自分が悲しかった。 「魔導師というのも不便なものだ。AMF環境下では何もできない…とはいっても、これほど重いAMFは初めてだとは思うがね。ふふ…このAMFはこの建物全体を覆っており、さらに言えば、階下では大量の機会兵器が待ち構えている。君に助けは来ない」 スカリエッティが私のあごを持ち上げ、顔を近づける。 「君には、最後まで鑑賞していてもらうよ。この特等席でね。はーっはっはははー」 ------------- 軽く体を動かしただけで痛みが前身を走る。 …まずい、肩がやられた…たぶん、折れてる…。 アリシアさんを見上げる。 息ひとつ切らしてない…か…。 たぶん、ブラスターモードをもう一段階あげても、きっと勝てない。 やっぱり、あれをやるしかないか… ------- 「なのはちゃん、ちょっと良いかな?」 廊下を歩いている途中、シャマルさんに呼び止められた。 「なんですか? あ、体調なら大丈夫ですよ。ほら、このとおり」 「うん…でもね、ちょっと気になることがあって、私の部屋まで来て くれるかな?」 「はい…」 シャマルさんの部屋に入って椅子に座ると、目の前にモニターがあり、私とレイジングハートに関するデータが表示されていた。 「この前のJS事件のときにブラスターモードをフェイズ3まで使ってしまったせいだと思う…」 シャマルさんが、私の身体データを見せる。 「そんなに…まずいんですか?」 「今すぐどうこう…と言うことではないの。でもね、もし今後もああ いったことをした場合…いつかは体が限界を迎えて壊れてしまうかもしれない」 「…」 「特に、ブラスター4…ファイナルリミットブレイクは絶対に使ってはダメ。たぶん、それを使えば、なのはちゃんは一時的に誰よりも強 くなれる。でも…」 「それは、本当尾の意味での限界突破…」 私の言葉にシャマルさんがうなづく。 「私たちのような魔導師にとって、体は風船。魔力は空気みたいなものよ。空気の量を多くしても、風船は大きくなるだけですむ。だけど、一定量を超えてしまえば、いずれはその圧力に耐え切れず…風船は割れる」 「…でしょうね…」 「だから、お願い。ブラスター4だけは使わないって、約束して…なのはちゃん」 --------- 使うまいとは、思ってたんだけど… 「ねぇ、レイジングハート」 『What is it? My master』 「ブラスター4。どれくらいもつかな…」 使った瞬間、私の体が壊れて動けなくなるようじゃ意味がない。 せめて、3分…いや1分動ければ。 考えているのか、レイジングハートは黙ったままだ。 「レイジングハート?」 『Perhaps it is approximately 5 minutes. But…I am against it . Your present power can fight enough. Please believe oneself and me』 「レイジングハート…」 そうだ…こんなところで倒れるわけにはいかない。 帰りを待っている人たちが…みんながいる。 ゆっくりと空へと向かい、アリシアさんと向かい合う。 右がやられても、左はまだ生きてる。 大丈夫…私とレイジングハートならきっとできる! 「行くよ、レイジングハート!ブラスター3!」 『blaster third』 決着をつける…勝つんだ!