「こちら、スバル・ナカジマ。女性を1名保護しました。引き続き任務にあたります」 『良いペースだ。こちらからの指示があるまでは自己判断で行動し てくれたまえ』 「了解です」 通信を切り、目の前にある瓦礫を破壊しながら炎の中を進んでい く。周りには瓦礫の山と人がいた跡。鞄や靴、ぬいぐるみなんかも 落ちている。みんなが、必死に逃げている状況が目に浮かぶ。そし て、まだ助けを待ってる人がいるんだ…。 ふと、後ろに目をやると、ロイドの姿があった。 私たちのコンビは、私がロイドの進行ルートを確保しながら移動し つつ、要救助者を確保し、ロイドが氷系の魔法で消火していた。こ ういう限定された空間の中でなら、私の移動速度の方が早い。とり あえず、ロイド君の進行ルートを確保しないと…っと。 『…生命反応』 念話?誰だろ? 『この先の吹き抜けに生命反応が1つある』 「え…と?あなたは?」 それだけ言うと、念話は一方的に打ち切られた。 地図を見ると、今いる地点から2ブロック先に吹き抜けがある。これ のこと…? しばらく走り続けていると、私の方でも生命反応が確認できた。 『ロイド!?』 『ああ、こっちでも確認できた。あいつの言ったとおりだな』 『あいつ?きゃ…』 『お、おい!?ナカジマ?』 吹き抜けに着くと、そこは今までで一番炎の勢いが強く、うねるよ うに一面を埋め尽くしていた。 『どうした?ナカジマ』 『火の勢いが強い…熱でセンサーもやられて詳細情報が出てこな い。これじゃ、どこにいるのか…』 『待ってろ、今、俺が… 消してやるからよ!」 ロイドの足元に魔方陣が浮かび上がる。 「その風は凍てつく疾風。熱きものを鎮めよ…Freezing wind!」 吹き抜ける風が炎を弱めてくれたおかげで、居場所がわかった。って、これ真上? 見上げると、吹き抜けから見える3階部分に女の子の姿があった。煙 にむせているのがここからでも確認できる。まだ生きてる…! 「待ってて、今…!」 そう言葉を発した瞬間、大きく3階部分が崩れ 「きゃぁあぁぁぁぁ!!」 女の子の叫びが吹き抜けを突き抜けるように…響き渡った。 「ウイングロード!」 足元に広がるのは、空への道。 その上を瓦礫の隙間を縫うように移動しながら、さっき見つけた女 の子の元へ走る。 くそっ…瓦礫が視界をふさいでよく見えない! あの子は… 大きな瓦礫を右に見つつ、かわす。 その視線の先に…女の子の姿が映った。 「しまっ…」 急いで反転して、落下して行く女の子を追いかける。 だけど…これは… 『sonic move!』 その声が聞こえた瞬間、目の前を光が突き抜けた。 まさか…あれって… 「たく…これ、魔力使うんだかんな…」 「ロイド君!」 急いでロイドに駆け寄って、女の子の様子を見る。 間一髪でロイドが抱きとめてくれたから怪我はないみたいだけど、 意識がない。早く運ばないと…。 ふと見ると、ロイドは明らかにさっきまでと違い肩で息をして苦し そうにしている。 「ロイド君…?」 ドォォォォォォォォ!! 音の方向を見ると、来た道が崩れた瓦礫に完全にふさがれていた。 「こっちもだ…」 ロイドが苦々しく呟く。 見ると、もう一方の道は炎に包まれていて進めそうにない。 「ちっ…ナカジマ…ちょっとこいつを抱えてろ」 「抱えてろ…って、ロイド君、何するつもり!?」 「決まってんだろ…瓦礫をどかすのは無理でも、火なら俺の魔法で 消せる…そっちしか進めねえだろ…!」 「無理だよ…そんな状態でこれ以上、魔法使ったら…」 「前も後ろも進めない…こんな状態でのたれ死ねって言うのか?」 ロイドが私の目を睨みつける。 「俺たちは特別救助隊(レスキュー)なんだ…どんなとこからでも、 生きて帰らなきゃいけないんだよ!」 真剣な目から、決意が伝わってくる。 ああ、この子は今までもこうやって戦ってきたんだ。 だけど… 「…わかってる。だけど、ロイド君に魔法は使わせない」 「てめ…」 「道なら…あるよ…」 そう呟いて、天井を見あげる。 「道って、まさか…」 「そこに道がないなら、造ってしまえば良い…マッハ・キャリ バー!」 『all right,buddy. …Safe confirmation completion on the line of fire . I can shot anytime.』 「ん…ありがと」 意識を集中して、力を込める。 これだけの厚さの壁を抜いたことはないけど…今なら、きっとでき る。 「ディヴァイン…バスターーー!!」 天井に向かい青い閃光を放つ。 ぶち抜けっ―