海鳴海浜公園 ここが、フェイトさんがいなくなってしまった場所…いけない、今は敵のことを考えないと。 「誰も…いないね」 キャロが不安そうに呟く。 「油断しないで、キャロ。どこかに隠れているのかもしれない」 周りの気配を感じ取る。 …いた! 「そこだ!」 地面を蹴り、その勢いを利用して、前方の空間を切り裂く。 「くっ…」 声の主は擬態をとき、僕から離れるように後方に飛んだ。 手ごたえがあったように思ったけど…浅かったのか…? みたところフェイトさんたちの同じくらいの年頃の若い男だ。 男の手には、その体つきには見合った、巨大な両刃の剣が握られていた。 「ふむ…これは面白い。闇にまぎれた俺に気づかないなら、それはそれ…と思っていたんだが…」 「あなたが抵抗しなければ、僕たちも手荒な真似はしません。投降してください」 「投降か…それはできないし…」 男が右手に持っていたものを真上に投げた。 すると、それは四つにわかれ、僕達を取り囲むようにフィールドを張った。 「する必要もない」 フィールド系魔法…これは… 「気づいたか? これは、やつからもらったAMFの発生装置だ。お前達のような魔導師は魔法が使用できなければ、恐れるに足りない」 やはり、AMF…なら、発生させている装置を壊せば… 「念のために言っておくが、装置を壊そうなどとは考えないほうが良い」 「…なんだと?」 「その装置は破壊した場合、半径500mほどの空間を巻き込んで爆発す る。君たちもそれから逃れることはできないだろう。止める方法はただ2つ。俺が自分の意思でこのフィールドを閉じるように指示を出すか…俺を殺すか。後1分もすれば、この空間は一時的に閉鎖され、外界とのバリアの役目も果たす。半径50mの闘技場といったところだな。見たところ、その少女は戦士ではない様だ。そうなる前に、その少女を外に出すことをおすすめするがな…」 「くそっ…」 「エリオ君…」 魔法が使えない以上、キャロを前に出すわけには行かないし、AMF環境下では、竜召還も暴走する危険性が高い。 となると、やっぱり… 「キャロは下がってて、ここは僕に任せて」 「私も…でも、私じゃ、ただの足手まといだよね…。ごめんなさい…がんばって、エリオ君」 男の目を真っ直ぐ見据える。 大丈夫…僕ならやれる。 「良い目をしている…少年、名前は?」 「時空管理局機動六課 竜騎士 エリオ・モンディアル」 「モンディアルか…覚えておこう」 男が剣を一振りさせる。 強烈な風きり音と共に、地面がその風圧でえぐれた。 「わが名は、聖王護衛闘士部隊隊長アキレス。己の剣の誇りを取り戻 すため、その首をいただく!」 ‐‐‐ ドイツ。自然森林公園。 「はぁ…はぁ…」 さっきから、妙な気配を感じる…人のものではないようだが…殺気もないようだから、まぁ良い。 「せぁっ!」 ふぅ…今日の鍛錬はこれくらいにしておくか… ん?気配が一つ増えた… 「そこにいるのは誰だ?」 俺の言葉につられるかのように、男が一人、近くの木の陰から出てき た。 「いつ気づいたんだい?」 緑色の髪…ここでも、そんな髪の色の人間は見ないんだがな… 警戒を解かないほうが無難だな。 「妙な気配は感じていた。だが、それがはっきりしたのは、あんたがそこまで近づいてきたときだ」 「妙な気配?ああ、ウンエントリヒ・ヤークトのことか…すごいな、彼らの気配を掴むなんて…」 「ウンエントリヒ・ヤークト?」 「それも含めて、君に話がある。僕の名前はヴェロッサ・アコース。君の力を貸して欲しいんだ」