第16話 見据える先にあるものなの
海鳴海浜公園
ここが、フェイトさんがいなくなってしまった場所…いけない、今は敵のことを考えないと。
「誰も…いないね」
キャロが不安そうに呟く。
「油断しないで、キャロ。どこかに隠れているのかもしれない」周りの気配を感じ取る。
…いた!
「そこだ!」
地面を蹴り、その勢いを利用して、前方の空間を切り裂く。
「くっ…」
声の主は擬態をとき、僕から離れるように後方に飛んだ。
手ごたえがあったように思ったけど…浅かったのか…?
みたところフェイトさんたちの同じくらいの年頃の若い男だ。
男の手には、その体つきには見合った、巨大な両刃の剣が握られていた。
「ふむ…これは面白い。闇にまぎれた俺に気づかないなら、それはそれ…と思っていたんだが…」
「あなたが抵抗しなければ、僕たちも手荒な真似はしません。投降してください」
「投降か…それはできないし…」
男が右手に持っていたものを真上に投げた。
すると、それは四つにわかれ、僕達を取り囲むようにフィールドを張った。
「する必要もない」
フィールド系魔法…これは…
「気づいたか? これは、やつからもらったAMFの発生装置だ。お前達のような魔導師は魔法が使用できなければ、恐れるに足りない」
やはり、AMF…なら、発生させている装置を壊せば…
「念のために言っておくが、装置を壊そうなどとは考えないほうが良い」
「…なんだと?」
「その装置は破壊した場合、半径500mほどの空間を巻き込んで爆発する。君たちもそれから逃れることはできないだろう。止める方法はただ2つ。俺が自分の意思でこのフィールドを閉じるように指示を出すか…俺を殺すか。後1分もすれば、この空間は一時的に閉鎖され、外界とのバリアの役目も果たす。半径50mの闘技場といったところだな。見たところ、その少女は戦士ではない様だ。そうなる前に、その少女を外に出すことをおすすめするがな…」
「くそっ…」
「エリオ君…」
魔法が使えない以上、キャロを前に出すわけには行かないし、AMF環境下では、竜召還も暴走する危険性が高い。
となると、やっぱり…
「キャロは下がってて、ここは僕に任せて」
「私も…でも、私じゃ、ただの足手まといだよね…。ごめんなさい…がんばって、エリオ君」
男の目を真っ直ぐ見据える。
大丈夫…僕ならやれる。
「良い目をしている…少年、名前は?」
「時空管理局機動六課 竜騎士 エリオ・モンディアル」
「モンディアルか…覚えておこう」
男が剣を一振りさせる。
強烈な風きり音と共に、地面がその風圧でえぐれた。
「わが名は、聖王護衛闘士部隊隊長アキレス。己の剣の誇りを取り戻すため、その首をいただく!」
‐‐‐
ドイツ。自然森林公園。
「はぁ…はぁ…」
さっきから、妙な気配を感じる…人のものではないようだが…殺気もないようだから、まぁ良い。
「せぁっ!」
ふぅ…今日の鍛錬はこれくらいにしておくか…
ん?気配が一つ増えた…
「そこにいるのは誰だ?」
俺の言葉につられるかのように、男が一人、近くの木の陰から出てきた。
「いつ気づいたんだい?」
緑色の髪…ここでも、そんな髪の色の人間は見ないんだがな…
警戒を解かないほうが無難だな。
「妙な気配は感じていた。だが、それがはっきりしたのは、あんたがそこまで近づいてきたときだ」
「妙な気配?ああ、ウンエントリヒ・ヤークトのことか…すごいな、彼らの気配を掴むなんて…」
「ウンエントリヒ・ヤークト?」
「それも含めて、君に話がある。僕の名前はヴェロッサ・アコース。君の力を貸して欲しいんだ」
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最終更新時間:2010年02月21日 23時39分05秒